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日本で初めて栄養療法の専門クリニックを開いた医師が、老化を年齢の話から外して書いた1冊です。前編は、脳がなぜ体の中でいちばんサビやすいのかという話です。
書いた方
溝口徹医師。1964年神奈川県生まれ。福島県立医科大学卒業。横浜市立大学病院、国立循環器病センターを経て、1996年に辻堂クリニックを開設。2003年、日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニックを開設しました。
老化のメカニズムには、3つの説があります
本書が有力なものとして挙げているのが、フリーラジカル説、テロメア説、遺伝子説の3つです。
フリーラジカル説は、米ネブラスカ大学のデンハム・ハーマン博士によって提唱されたものです。原子は原子核のまわりを電子が回っていて、電子は1つの軌道に2個ずつある。なかには1個しかなく、ペアを組めない電子が生じる。この不対電子をもつ原子や分子がフリーラジカルだ、と説明されています。
ペアになった電子は安定していて、ペアを組めないフリーラジカルは不安定なまま体内を駆けめぐります。
溝口医師は、遺伝子がかかわる2つの説は日常の工夫では改善できないが、フリーラジカルが関係する老化は抗酸化物質を摂ることで防止できる可能性がある、と書いています。
体の老化と、脳の老化は違います
体の細胞は分裂を繰り返しています。本書によると、1日に死ぬ細胞は全体の約200分の1といわれ、死んだ分を分裂した細胞で補っている。だから臓器の形も機能も保たれます。
脳の神経細胞では、この仕組みが同じようには働きません。本書は、脳の老化を神経細胞のネットワークが減っていくこととして説明しています。
いちばんサビやすいのは、脳です
成人の脳は1キログラムほど。体重50キログラムの方なら2パーセントです。この2パーセントが、全身で使うエネルギー量の18から20パーセントを使っています。眠っているあいだも消費量はそれほど落ちません。
活性酸素は、酸素を消費しているところで発生します。もっとも多く酸素を使う脳が、そのまま大量の発生源になる、というのが本書の説明です。
活性酸素のすべてがフリーラジカルというわけでもありません。スーパーオキサイドとヒドロキシラジカルは、電子がペアになっていないためフリーラジカルです。過酸化水素と一重項酸素は不対電子をもたないため、フリーラジカルではない。本書はそう区別しています。
害だけでもありません。白血球のなかでフリーラジカルが発生して初めて、白血球はウイルスや細菌を退治できる、とも書かれています。
増やしてしまう生活習慣
典型として挙がっているのが飲酒と喫煙です。習慣的に頭痛薬や胃薬を服用している方は注意が必要だ、とも書かれています。
意外なものが、もう1つ。激しい運動も活性酸素の発生を促します。溝口医師がすすめる目安は具体的です。ウォーキングや軽いエアロビクスなどの有酸素運動。心臓がちょっとドキドキして、汗ばみ、会話ができるくらい。時間は20分から30分。汗がしたたり落ちて息が上がり、会話もできなくなるほどやるのは、あきらかにやりすぎだ、と。
糖化が怖い理由
糖化は、おもに血液中のブドウ糖が、たんぱく質や脂質と結合する反応です。
本書がいちばん強く書いているのは、その先です。活性酸素を消去する酵素であるSODは、活性中心に銅を含んでいます。糖化したSODは構造が失われるため、中心におさまっていた銅が表面に出てくる。表面に出た銅はイオンとして存在し、次々とフリーラジカルを産生し続ける反応の引き金になってしまう。
消去するはずの酵素が、大量の発生源に変わる。溝口医師は、この入れ替わりに糖化の怖さがあると書いています。
目安も挙げられています。糖尿病の診断に使われるヘモグロビンA1cが上がり始めた場合には、かなり糖化がすすんでいると考えられる、と。
コエンザイムQは、ビタミンEのサビを落とします
フリーラジカルが細胞膜を傷つけると、ビタミンEが修復にあたり、その際にビタミンE自身が酸化されます。酸化したビタミンEをビタミンCが元の姿に戻し、そのビタミンCと協力してビタミンEを回復させるのがコエンザイムQだ、と説明されています。
年齢とともに減ります。心臓で見ると、もっとも多く存在しているのは20代で、30代になると3割減り、80代では半分以下になる。
食品からの量も具体的です。100ミリグラムのコエンザイムQをとろうとしたら、イワシを1.6キログラム、数にすれば25匹以上。ブロッコリーなら、ざっと66株という計算になる。
後編について
後編は、第3章と第4章を扱います。脳のエネルギーは砂糖ではないという話、脂質とコレステロール、栄養素ごとの働き、そして脳の機能は何歳からでも向上するという結論までです。
書籍情報
溝口徹『「脳の栄養不足」が老化を早める!』青春新書INTELLIGENCE
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