『「脳の栄養不足」が老化を早める!』溝口徹|後編・脳は、何歳からでも作り直せる

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脳は、脂質でできている。オメガ3はDHA・EPA・アルファリノレン酸で青魚や亜麻仁油。オメガ6はリノール酸でベニバナ油や大豆油。脳の重量の50から60パーセントは脂質。

前編は、脳がいちばんサビやすい臓器だという話でした。後編は材料の話です。脂質とたんぱく質、栄養素ごとの働き、そして本書がいちばん強く言い切っている結論までを見ます。

脳のエネルギーは、砂糖ではありません

疲れたときに甘いものを口に入れる。本書は、その習慣を第3章の最初で外しにかかります。

脳が燃やすのは血液中のブドウ糖であって、砂糖そのものではない。吸収の速さが問題になります。溝口医師が挙げているのは、精製される前の状態で摂ることです。白米を玄米に、パンを精製された小麦粉のものではなく全粒粉のものに変える。これだけでも糖質の吸収のされ方はゆるやかになる、と書かれています。

食べる順番の実験も紹介されています。キャベツを4分の1個、カレーライスの前に食べた場合と、あとに食べた場合。前に食べたほうが、血糖の上がり方が圧倒的にゆるやかでした。

肉を控えると、頭の回転が落ちます

たんぱく質は英語でプロテイン。ギリシャ語で「第1位のもの」を意味するプロティオスが語源だとされている、と本書にあります。

食事でとったたんぱく質は消化酵素でアミノ酸に分解され、血液に乗って各器官へ届きます。脳に届いたアミノ酸は、L-グルタミン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンなどの形で脳内に入り、いくつもの代謝を経て神経伝達物質になります。記憶と認知を司るアセチルコリン系、ドーパミン系、グルタミン酸系も、原料はすべてたんぱく質です。

代謝を進める酵素も、たんぱく質から作られます。

溝口医師は、大豆製品をせっせと食べても必要な供給量には追いつかない、肉類を食べるのがもっとも効率のよいたんぱく質の供給法なのだ、と書いています。

1日の目安は、体重1キログラムあたり1グラムから1.5グラム。体重50キログラムの方なら50グラムから75グラムです。肉などのたんぱく質量は加熱調理により半減するため、減る分を踏まえて考えるように、とも添えられています。

脳は、脂質でできています

脂肪の中で本書が分けているのが、オメガ3とオメガ6です。

オメガ3はDHA、EPA、α-リノレン酸が多い油。DHAやEPAはイワシやサバなどの青魚に、α-リノレン酸は亜麻仁油やシソ油に多く含まれます。オメガ6はリノール酸に代表される油で、ベニバナ油、コーン油、大豆油に多く含まれます。

避けるものも書かれています。欧米ではマーガリンにトランス型脂肪酸の含有量を表示することが義務づけられ、含む調理油の使用を禁じるファストフード店も続出している。ところが日本の厚生労働省は、日本人は欧米人に比べて摂取量が少ないため規制の必要なしとしている、と。

どんな油も時間が経つと酸化します。揚げてから時間の経ったスナック類、油を使い回している総菜、揚げてから加工している冷凍食品を、本書は酸化食品の典型として挙げています。

栄養素ごとの、はっきりした割り当て

第4章は、悩みと栄養素を1対1で並べています。集中力にビタミンB群、意欲にたんぱく質、疲労回復に鉄、脳の機能にDHA。酸化を防ぐ側にグルタチオン、ビタミンE、ビタミンC、α-リポ酸。

鉄の項目は数字が具体的です。平成19年の国民健康・栄養調査によると、成人女性の1日の鉄の摂取量は7ミリグラム前後。生理で1カ月に30ミリグラムの鉄が失われるため、単純計算でも男性の倍はとる必要がある、と書かれています。

吸収率も違います。植物に含まれる非ヘム鉄は含有量の約1から5パーセントしか吸収されず、動物性のたんぱく質に含まれるヘム鉄は10から30パーセントが吸収されます。

記憶を司る場所では、細胞が新しく生まれています

本書の終盤に、結論があります。

記憶に深く関係する海馬では、他の脳組織よりも活発に神経細胞の新生がおこなわれていることがわかった。そして、もっとも注目すべきこととして挙げられているのが、体を使った運動が神経細胞の新生を促すということです。

溝口医師は、「失われた脳の機能は戻らない」という考え方はすでに完全に否定され、何歳になっても脳の機能を向上させることが可能であると科学的に証明されている、と書いています。本書でいちばん強い言い切りです。

必要なのは刺激と栄養の両方だ、というのが本書の答えです。

本書の結びの一文は、こう置かれています。食べることとは、生きることだ。

書籍情報

溝口徹『「脳の栄養不足」が老化を早める!』青春新書INTELLIGENCE

『「脳の栄養不足」が老化を早める!』溝口徹(青春新書INTELLIGENCE)

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Dr.EKO博士
Dr.EKO(YAEKOFU)― 医学博士
医学博士・整形外科専門医。スタンフォード大学で予防医学を研究。医療の先にある「しなやかな暮らし」に寄り添う逸品を、日々の暮らしのなかで実際に使いながらひとつひとつ選びぬいてご紹介しています。"しなやかに生き抜く" 暮らしの伴走品を。